大阪新音はなぜサークル・会員制か

「良い音楽を安く聴きたい」が発端

大阪新音は1949(昭和24)年に、「労音」の名称で発足しました。発案したのは職場の器楽演奏サークルや合唱団のネットワーク組織で、はじめの動機は「自分たちの演奏向上のために、一流の音楽家の演奏を聴きたい」ということだったようです。

しかし「演奏会は入場料が高くて、とても行けない」、「それなら自分たちで演奏家に頼んで安く来てもらうようにできないか」、「だったら、職場の音楽好きの人たちも誘って一緒に演奏を聴くようにしたらどうか。費用を頭割りにすれば一人当たりの負担は軽くなる」、「いっそ会員制にし、定期的に演奏会を開くことにしよう」…というように話が膨んでいき、ついに〈良い音楽を安く多くの人々に〉をスローガンとする音楽鑑賞団体、「労音」の誕生にこぎ着けたのでした。

当時は、アジア・太平洋戦争敗戦後の貧しく荒廃した社会だったけれど、新しい憲法(=現行の憲法)により、国民主権や戦争放棄、自由と民主主義の国づくりがはじまり、文化や芸術への関心も高まっていました。ただ、音楽を聴いてみたいと思っても演奏会の開催数はさほど多くなく、しかも当時の収入からすると高額で、一般の勤労者にはおいそれと通えるものではなかったのです。

会員の 会員による団体が基本

そんな状況が当たり前のところへ、皆で会費を持ち寄ることで「良い音楽」が安く聴ける労音が発足したとあって、たちまち話題となりました。しかも、

  • どんな演奏会を開くかは会員から希望・要望を聞いて決定する
  • 会の運営(事業執行)は、あくまでも会員から選任された役員が中心となって行う

という方法は民主的で、時代にふさわしい方法でした。

つまり「会員の、会員による会員のための会」を基本にした訳で、その主体となったのが職場や学校において会員自身がつくった大阪労音サークルでした。
おかげで、大阪労音は大きな支持を得て発展しました。

現在も「企画・運営は会員の手で」

大阪新音は1974(昭和49)年に大阪労音を改組(および名称変更)し、その運動を引き継ぎましたが、今も大阪労音以来の「会員の会員による会」を原則とし、

  • 企画・運営は会員自身が行う
  • 会員の希望・要望をもとに催しを企画、実現する

ことを旨とし、音楽を聴き続ける運動(鑑賞運動)に取り組んでいます。

ちなみに大阪新音に改組したときに、会員種別として初めて「個人会員」を設けました(それまでは、会員はサークルに所属することを原則としていました)。ともかく、大阪新音の会員は、コンサートホールが募集している「会員」などと、趣旨・目的がまったく異なるのです。

サークルの現在的意義

このようにサークル・会員は、これまでも。これからも、大阪新音の基盤です。とはいえ、サークルをめぐる状況はかつての時代と様変わりし、とくに職域において会員を募り活動することがきわめて困難になっています。そこで、サークルを「音楽鑑賞の『時と場』を共有する人たちの集まり(コミュニティ)」と再定義し、従来型の職域や家族・友人どうしのほか、さまざまなグループや集まりもサークルに含めることにします。今後は「サークル代表者会議」などにも加わっていただきます。

皆さまには、大阪新音のサークル・会員制の趣旨をご理解いただき、周りの方々に会員になっていただくよう働きかけ、またサークルやさまざまな集まりをつくり、大阪新音の運営に積極的に参画してくださるよう、呼びかけます。

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